研究内容

☆ 現在我々は主として大脳皮質の発生と上皮組織形成に関する研究を進めています。

☆ この二つは一見何の関連性も無いようですが、そのメカニズムを解析していくと多くの共通点が見つかってきました


大脳皮質の発生

 大脳は種々の神経組織の中で、ヒトを含む哺乳類に於ける発達が特に顕著な組織です。中でも大脳皮質と呼ばれる脳表面の大部分を覆う組織は、精神活動を司る細胞の集合体で、多種多様な神経細胞(ニューロン)、グリア細胞等により構成されています。この複雑な構造を持つ大脳皮質も発生過程を遡れば、単層の細胞から成る単純な組織(神経上皮)に行き着くことがわかっています。また、この大脳皮質の発生過程で必要な様々な遺伝子が、滑脳症、小頭症等の疾患原因遺伝子として同定されています。しかし、神経上皮の細胞が如何にニューロンとしての特異な形態を獲得し、さらに大脳皮質という複雑な構造の組織を形成して行くかは依然として大きな謎です。私たちはこの謎を解明すべく、 大脳皮質の正常発生を支えるも のとして独自に見出した細胞内シグナル伝達系を切り口に、分子?細胞レベル、あるいはマウスをモデルとした個体レベルでの研究に取り組んでいます



上皮組織形成

 大脳皮質神経細胞分化の過程における細胞の運動性や形態の変化は、一旦形成された細胞極性の崩壊と再構築、即ち細胞極性の転換として捉えることができます。神経細胞における細胞極性の転換は、細胞骨格のダイナミックな変化や遺伝子発現パターンの変化を伴いますが、このような変化は、神経細胞とは形態的にも機能的にも大きく異なる上皮細胞の集団による組織形成の過程においても見られます。腫瘍?嚢胞の形成やがん細胞の浸潤?転移は上皮細胞極性の病的な転換として捉えることもできます。我々は、これら異なる種類の細胞における細胞極性の転換を支える分子機構に或る共通点を見出したことをきっかけに、細胞極性の転換を可能にする普遍的なシグナル伝達経路の抽出に向けた研究に取り組んでいます。

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